2008年4月29日火曜日

テレ朝の3時間ドラマ

 同世代の友人と四方山話をしていた折り、「父親は何やっていたの?」という身の上話になって、友人は「親父は銀行員」だと教えてくれた。

 われわれの世代だと父親が「銀行員」と言えば社会のエリートである。そこで「ヘェー!どこの銀行」と聞いたら「当時は帝国銀行と言ってたが今の○○銀行」という。そのとき友人には打ち明けなかったが、昔「帝銀事件」というドラマに関わったことがあって、不思議な縁だなあと吃驚した。

 早速、自宅に帰ってから古い台本を引っ張り出した。テレビ朝日系列で放映された番組「帝銀事件」は、3時間枠で制作する同局の事件物のはしりで、冤罪事件として騒がれた平沢貞通被告の話である。行員ら12名が毒殺されるという凄惨な事件だ。

 台本を見直して、改めてこの作品の重さというか、真摯な制作意図が確認でき、新発見もあった。おそらく、このドラマが再び世に出る事はなかろうから、ここに記録しておきたい。

  制作=テレビ朝日・松竹株式会社  
  企画=霧プロダクション  
  原作=松本清張
  監修=野村芳太郎  
  プロデューサー=荻野隆史・佐々木孟  
  脚本=新藤兼人
  監督=森崎東  助監督=松原信吾
  撮影=小杉正雄  美術=重田重盛  

 主な出演者
  平沢貞通=仲谷昇  
  古志田警部補=田中邦衛  
  明智警部補=浜田寅彦
  稲佐検事=橋本功  
  政界真相社の男=小松方正
 
 ちなみに、私は帝銀の行員・西川道彦役で出演した。大船にまだ松竹撮影所があった時代で、そのスタジオに帝銀・椎名町支店のセットが原寸大で組まれた。実際にあった事件なので、ロケーションも多く、出演者多数の群像劇でした。

2008年4月7日月曜日

不器用な俳優の話

 役者には、感性が鋭く器用に役をこなす人と、感性が鈍くてどうしようもなく不器用な人がいる。そして、自分はというと完全に後者のほうに入る。

 この二つのタイプでいうなら、前者は生まれながらに俳優の資質を有し、演じることの天性と演技者としての適性があるといえそうだ。一方、後者は訓練と努力を己に課してどうにか役者の仲間入りを果たしているように思う。

 だからという訳ではないのだが、後者である私は一つの役をいただいて、それを演じるときの苦しみが尋常ではない。「悪戦苦闘」という言葉がぴったりはまるほど、出演する度に実力の無さに打ちのめされるのである。

 それなのになぜ役者を──と自問自答してみると、苦しくて辛いのだけれど、己の創造した人物がドラマの中で生きられたとき、至上の開放感と幸福感があるからだろう。

 正確に数えたことはないが、私はこれまで舞台、映画、TVを合わせ、約350本は下らない作品に出演してきた。もちろん、かけだし時代の端役も含めての数だが、一度も廃業を考えずここまでやってこれたのは不器用だったからだと思う。

 そして、こうした私の役者人生からすると、出演作品の企画段階から関わるのと、規定路線の定まった作品にゲスト的に関わるのとでは、演技者としての発露に格段の差が出てしまう。

 その点は俳優すべてに共通するのだろうが、特に私みたいな不器用役者には企画段階から参加して、スタッフ、キャストともども喧々諤々と議論しながら作品を仕上げて行くほうが、自分の芝居もうまくいくからである。

 ところが、残念ながら私のこれまでの出演作は、圧倒的に途中参加が多い。企画の固まらない時点から参加できるなら、ノーギャラでも学生映画でも喜んで出演しちゃう気構えなんですが・・・・。

 *所属事務所 俳協URL  http://www.haikyo.or.jp/

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